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『パイレーツ・ロック』:何となく観客を感動させてしまう音楽映画っていつもズルい
2009年11月12日 22:31 [21矢澤利弘]

音楽でみんなが仲良くなれるとか、音楽は世界を救うとか。音楽映画は往々にして音楽ばんざい的なものになりがちだ。そして、それはそれで何となく観客を感動させてしまう。だからズルいのである。
リチャード・カーティス監督の『パイレーツ・ロック』もそうした音楽映画の中の一本だ。だが、舞台設定のうまさとストラグル(葛藤)を適度に配置することによって本作を魅力的な映画として成立させている。
海上に浮かぶ船からDJたちがロックを放送し続ける海賊放送局が舞台。1966年のイギリス。正式な民放ラジオ局は存在せず、BBCは一日45分しかロックを放送していなかった。
物語は海賊放送局の型破りなDJたちの日常生活を追っていく。それに対して海賊放送を一掃しようとする政治家。その活動を平行して描くことによって平板になりがちなDJたちの船上生活の描写に対する対立軸を設定し、ストーリー上の緊張感を持続させている。
船上という閉鎖された空間。友情、女性問題、内紛といったエピソードが羅列されていく。ストーリーが進行するにつれて、バカな奴らが実に魅力的なキャラクターに見えてくるから不思議だ。
海 上という舞台設定。この状況下、映画の作劇において登場人物たちの最大の脅威となるものは海水だろう。そして本作はちゃんとそうした材料を使用し、映画的 にはこうあるべしという構成になっている。そしてズルいと思いつつ、最後にはやはり音楽映画のワナにはまってしまうのだ。(了)

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