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『地下鉄のザジ』(完全修復ニュープリント版):夢の中の映画。ポップだけどアバンギャルド。

2009年11月 1日 01:32 [21矢澤利弘]

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ルイ・マル監督の『地下鉄のザジ』は1960年製作だから、生誕50年になる。その記念ということで完全修復ニュープリント版が公開され、数年ぶりにこの映画を見返す機会に恵まれた。

とにかく自由な映画。『不思議の国のアリス』のように、パリという不思議の国を少女のザジが縦横無尽に走り回る。田舎からやってきたザジの一番の目的はパリの地下鉄に乗ること。でも地下鉄はスト決行中。そこで、夢の中の世界のようにザジがパリの街に騒動を巻き起こす。

この映画、ひょっとして、ザジが列車でパリに到着したときから夢が始まり、田舎へ帰っていくときに夢から醒めるという構造の夢落ちなのではないかと考えてしまう。

イントロとエンディングを除いて、映画はほぼリアリティを欠いた描写で構成されている。ストが終わり、地下鉄が動き出す。しかし、肝心のザジは居眠りをしてしまい、地下鉄に乗ったのにも係わらず、全然それを覚えていない。

もしかすると、映画の中の世界で眠ってしまったことは、現実の世界における覚醒を意味するのではないか。そんなことを考えているとますます分からなくなってくる。

『地下鉄のザジ』は、自分が夢の中で蝶となったのか、それとも蝶が夢を見て自分になっているのか分からなくなってしまった、という荘子の「胡蝶の夢」のような映画なのである。(了)

矢澤利弘