事務局のTODOと申します
事務局のTODOと申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。
私は3年に2回ほどしか映画館に足を運びません、と幾ばくかはシャレのつもりで胸を張って公言したら、映画の大学職員としてあるまじきこと、と強い叱責を受けました。
しかし、言い訳ながらそれには理由があるわけで、グダグダ書き並べておくことにします。(ただし種々差し障りがあるので、以降、具体名を記せない部分があるのが自分でももどかしくも、申し訳ない次第です。)
それは私が中学生のころ、今からもはや40年も昔のことです。野卑な表現ながら、少々ながらも色気付いてきた私は、比較的仲の良かった男友人3人と、グループデートを企図したのでした。目的は、当時メディアでずいぶんと持て囃されていた、いわばSF(と、してよいのでしょうか)超大作のハリウッド映画鑑賞です。私たちは、それぞれ、中学生にありがちな"ウブさ"で、それぞれの第一ターゲットではなく、当たり障りのない、まあ、嫌いではない、女子を誘ったのですが、これが存外、簡単にまとまり、次の日曜の昼下がり、6人でのお出かけが決行されました。
さて当時は(あるいは地方都市だから、なのかも知れませんが)ロードショウとはいえ、2本立ての上映で、当日最初にかかったのがB級、いやC級、いやいや、X級としてもよいほどのマイナーなマカロニ・ウエスタンでした。
ところが意外にこれが面白かったのです。その荒唐無稽さに私たちは笑いこけ、興奮したのでした。「やあ、映画って、本当にいいなぁ」と心から感じたものです。
その余韻をかって、いよいよメインイベント、SF超大作の幕はゆっくりと上がりました。新聞広告などでの"家族皆で楽しめる"だの、"観客席を感動と興奮の渦に巻き込んだ"だの、"今世紀最高の超大作"とかいった、無条件に期待を持たせるキャッチはしっかりと私たちに刷り込まれていましたし、暗い館内の隣に座る女子の、その甘酸っぱいほのかな少女の香りと相まって、それまで経験したことのないほど、ますます心躍りました。
そして今でも誰もが知っている、テーマミュージックの大音響が小さな小屋に響き渡りました。私たちは興奮の絶頂、でした。
う?
そうです、その時点が、絶頂、だったのです。もはやそれ以降、私たちのこの映画に対する興味はどんどんと、音を立てて崩れ去っていったのです。もちろん私だけではありません。6人すべてが、本編がはじまった以降、この映画に対する意欲と、気力と、期待と、その他諸々のポジティブな感情が、あまねく、どんどんと朽ち落ちていったのです。
早い話が要するに、難解だったのです。わからないのです。面白いか否か、それさえも判断できないのです。なぜこれが"家族皆で楽しめ、観客席を感動と興奮の渦に巻き込む、今世紀最高のSF超大作"なのか、全く理解に苦しんだのです。
暗い中、上映中途で私は"詰まらないから出ようか"と隣席の女子に囁きました。彼女は私の言葉を待っていたかのように、次々に他の友人たちに伝言し、晴れて6人は、全員何らの異存なく中座となったのです。
館外の眩しい光を浴びて、私たち6人は全員、晴れ晴れとした気持ちに戻りました。
「なんでい、あれ、ウエスタンの方がよほど超大作じゃねぇか」
私はグループの真ん中で、わざと不良っぽくまくし立てました。皆は笑顔で私の言葉を受け止めました。
それ以降、私は映画を見なくなりました。同時に"映画って、いったい、なんだべか"と考えるようになったものです。
私は専門家ではありませんので、偉そうなことは言えるべくもありませんが、聞きかじりでは、映画というものにはいくつかの、場合によってはそれぞれが相反したり、矛盾する側面があるとのことです。たとえば"芸術"という側面、"エンタテインメント"という顔、あるいは"ビジネス"としての存在、などなどとのことですが、これらが同時に何らの違和感なり矛盾なりがなく成立するのはほとんど無理であることくらいは、あれ以来映画を見なくなった、トーシローの私でさえいくらかは想像できるというものです。
いずれにせよ、"映画って、いったい、なんだべか"という疑問は、私の中で一生燻り続けるのでしょうか、ね。
[余談1]かつてこの「観客席を感動と興奮の渦に巻き込んだ家族皆で楽しめる今世紀最高のSF超大作」の悪口を、ある席で漏らしたら、同席者が「TODOさん、それ、某先生の前では絶対タブーですって、言っちゃいけません、絶対、絶対に。」とマジで蒼い顔したものです。某先生、どうやら件の超大作の信奉者、らしい。嗚呼、クワバラ、クワバラ、南無阿弥陀仏、南妙法蓮華経、南無八幡大菩薩、アーメン。
[余談2]冒頭の訂正なのですが、最近の私は1年に2回は映画館に足を運んでおります。もちろん自慢になどなり得ませんが。で、勢いで、練馬のシネコンの会員にさえなっております。
[余談3]専門家の間では、最近のテレビ局主導の邦画に疑問を呈する向きがあるようです。これもトーシローの生意気な戯言ではありますが、実は私も違和感をおぼえる一人ではあります。
で、会員になった練馬のシネコンでは、"相棒"と"鑑識・米沢守の事件簿"の二本を続けざまに、嬉々として、観てしまったのですが、これら、テレビ局主導作品であることは指摘されるまでもありません。"ごくせん"だとか"うどん"だとかよりは遥かにマシ、というつもりは毛頭ありませんが、所詮は、節操なし、と後ろ指をさされるに、やむなし、といったところです。トホホ。
