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2009年10月30日

21矢澤利弘

『南極料理人』:非日常的空間の極めて日常的な生活。特殊な状況下を愉しむ

代役として南極に送り込まれた自衛官。連距離恋愛の行く末。単身赴任の夫。原作はエッセイということもあるのだろうか。全編を通じて日常的なエピソードの積み重ねであり、ドラマ的な高揚感はない。だが、それがドキュメンタリー的な味わいを醸し出している。

沖田修一監督・脚本の『南極料理人』は南極の観測基地という非日常的な世界における隊員たちの日常を描いた。

観測基地の生活は単調で、同じことを繰り返す毎日だったりする。だが、料理は毎日変わる。隊員たちにとってはそれが楽しみだ。映画は隊員たちの日常を淡々と追っていく。日常生活といっても、特殊な状況下だから、それを描くだけでも映画として成立する。

極地を描く映画には『遊星よりの物体X』や『遊星からの物体X』、『30デイズナイト』などのサスペンスフルな映画も多いが、『南極料理人』はその対極にある。

従来、映画などではシビアに描かれてきた状況下の人々がいかに普通の人々と変わらないかという視点がなごみを醸し出す。普通なら緊迫したフォームで撮られる 警察内部の様子だが、それを否定し、警察の描写に庶民的な世界観を導入することでユニークな作品と成り得た『踊る大捜査線』などにも通ずる。


閉塞感から来る仲間内の不和や帰国したいというストレス感が描かれるのは、孤立した場所を描く映画のセオリーどおりだ。それでもシチュエーションがユニーク なので最後までに見せていく力がある。むしろ、原作がストーリーらしいストーリーを持たないゆえに、自由な脚本作りができたのではないだろうか。

料理素材の在庫が尽きるなかで、主人公の料理人がなんとかラーメンを作り、それをすする隊員たち。そのすする音。なんとおいしそうなことか。(了)

矢澤利弘

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