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2009年5月23日

04大野克人

プロデューサーとは何か?

 弊学の看板授業のひとつに、「映像ビジネス特論」というのがある。テレビ・ドラマの草分けとも言うべき工藤学長の顔の広さもあり、毎回映像ビジネスの第一線で活躍中の方々を講師に向かえ、大変参考になるお話を聞くことができる。今学期は、我々教員も聴講することが出来るオープンクラスにしてくれたので、毎回楽しみにしている。

前回の椎木隆太氏(DLE代表取締役)と本日の若泉久朗氏(NHKチーフプロデューサー)のお話を対比して聞くことにより、「プロデューサーとは何か?」の答えが,一つでは無いことを伺い知ることが出来る。

 椎木氏は、DLEを率いて世界初の全編FLASH劇場映画「秘密結社 鷹の爪」を成功させたことに端的に示されるように、「私は、映画などのコンテンツを創ることだけに専念しているプロデューサーは、プロデューサーではなく、映画監督あるいはダイレクターと呼ばれるべきであると思っている。プロデューサーの本来は、企業経営者の機能のようにコンテンツ製作すべてに関して判断し、意思決定し、責任を負うことにある。プロデューサーと経営者の最大の違いは、前者はリスクの高い仕事であるから成功率40%であっても認められるが、後者は成功率90%程度を維持しなければならないことである。」

 実は、この観点は、8月9日の当ブログに「事業構想論とプロデューサー」として、私がまとめた観点とほとんど同じもので、プロデューサーとダイレクターを明確に異なった職種として整理しようとすれば、このように考えることになろう。また、インディペンデントないしベンチャー企業としてコンテンツ制作するのであれば、誰か最高権限と総責任を負う人物が必要になる。それがプロデューサーであり、したがって、私が教える財務・ファイナンスについてもきちんとした理解をもつことが必要になる。そして、プロデューサーの要件として、椎木氏は「明確なヴィジョン、爆発的発想力、時流に乗ること、勝ち続ける力、英語力、多様な能力」を指摘された。

 

 これに対して、若泉氏は大組織で働くプロデューサーの立場から、プロデューサーの能力として「新しいプロジェクトを立案する企画力」「幅広い人脈から最適の人材を選び出すキャスティング力」「スタッフをやる気にさせ、能力を引き出すマネジメント力」といった点を強調され、資金集め等々の組織内分業や総責任を負う経営者とは区別されたプロデューサー論を展開された。NHKに限らず、大映画会社やテレビ局、あるいは呉越同舟になりかねない制作委員会方式で、コンテンツ制作を行う場合には、他局、他社との利害調整や経営者達の説得といった調整能力が必要になるわけで、人材の厚いNHKで良い仕事をされてきた若泉氏の話しぶりには、そのような気配りや配慮を感じることができる。若い人には見えづらいかもしれないが、これは、大組織でよい仕事を続けるためには、重要な能力である。カリスマ性を前面に出した椎木氏のプレゼンテーションとは対照的ではあったが、お二人ともそれぞれの置かれた環境で結果を出されてきた代表的プロデューサーであり、弊学の学生としてどちらの道を目指すかは、それぞれの置かれた状況次第であるということになろう。また、NHKのように分業を前提にした大組織でのプロデューサーを目指すから、財務や会計の勉強はせず、人任せにすればよいことにはならない。近代経営手法で管理する大組織では、プロジェクト責任者として財務・会計といった知識は不可欠で、これらの知識なしに大組織内の競争を勝ち抜き、プロデューサーのような人気業務を担当することは先ず不可能である。

 

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