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「スラムドッグ$ミリオネア」と「トウキョウソナタ」

2009年4月28日 11:05 [04大野克人]

 先ず、両作品の共通点を整理してみる。

     私が見たいと思っていた作品で、期待を裏切らない佳作であったこと。

     若い世代や子供の演技が素晴らしいこと。

     ある国(インドと日本)に関して、外国人(イギリス人とオーストラリア人)主導で作られた映画であること。

     解決が困難な社会の暗部を対象にし、ハッピーエンドに仕上げていること。

 

ポイント④から始めると、両作品とも無理やりハッピーエンドに持ち込んでいることから、現実の話として捕らえると、説得力を欠いてしまう感じがします。「スラムドッグ」の最終シーンで駅での群舞が出てきた時には、「2時間、私の世界に浸ったんだから、楽しんだでしょう。現実がどうこうと言わずに、映画はそれでいいんですよ」という作者の声が聞こえたようで、ある意味ホッとしましたが、題材が題材であるだけに、今少しまじめに締めくくった方が良かったようにも思われます。しかし、「トウキョウ」の方は、それ以上に無理なストリーになっており、役所広司さんの泥棒が登場してからの後半は、支離滅裂といってよいくらいの展開で、涙さえ流させられた前半の素晴らしい出来と、あまりに対照的。本作では、音楽の天才児に希望を見出し、立ち直ると思われる主人公の家族の傍らでは、挫折した夫婦及び泥棒には自殺で決着をつけている。死ねることは最後の救いではあるが、作り話の世界では、問題提起の片棒を担がせながら、死ぬ形で決着をつけることは、作者のイマジネーション不足と安易な狡さ、無責任さを感じてしまう。「トウキョウ」にも、明るい群舞のエンディングが必要だったのかも知れない。

 

ポンイト③:映画をファイナンスの観点から考えているので、Yahoo映画のユーザーレビューを必ず見て、観客の支持率を見るようにしている。「トウキョウ」でもっとも支持されているレビューは、「東京ではなくトウキョウ」(星1つ、最低評価)で、綺麗な身なりのサラリーマンが炊き出しご飯にありついたり、失業した課長クラス二人の家が私の家より綺麗であるとか、プジョーのオプンカーが強引に使われたりとか、日本の現実を知っているものから見ると、ナンジャイこれはと思う場面や話が少なくない。岩井俊二監督の傑作「スワロウテイル」のように、無国籍を明確に出していればともかく、ストリーの相当分を日本の現状に依存しているだけに、日本人スタッフはもっとこの点の修正に努めるべきであったと思う。作者の意図はともかく、多くの日本人観客の支持を失う要素になったと思われることは、佳作であるだけに残念である。

 

 同じことは、「スラムドッグ」についても言えるはずであるが、「若いうちにインドに行くと人生観が変わってしまうから、注意しろ」という助言にしたがい、私はこの歳までインドに行ったことがない。幸い、インド研究の若手有望株である深尾先生が、このブログに「スラムドッグ」分析を連載中ですので、本当のインドの人はこの映画をどのように見るのだろうか、ということを質問してみたい。「スラムドッグ」という映画は、インドを舞台にしたことだけで、相当なドラマティック性を得てしまっているので、インドを選択し得られる自動的な加点部分を差し引くと、映画としてどの程度優れていると言えるのであろうか。

 

 いずれにしろ、両作品とも見るに値する佳作であると思います。