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~西5でちょっとだけお茶を~ 「映像化を仕掛けるのは誰だ!」

2008年7月19日 14:35 [01工藤英博]

初期プロレタリア文学の代表作と称される小林多喜二の『蟹工船・党生活者』が今年に入って37万部を越す売れ行きだという。

 書店に行って驚いた。『蟹工船』(新潮文庫)の横になんとマンガになった『蟹工船』が並んでいるではないか。その帯には"ずっと読みたかった名作。漫画なら読めた。"と劇団ひとりが一役買っている。

 これほどのブームになった経緯を少し調べてみたら、きっかけは、作家の高橋源一郎とプレカリアートのジャンヌ・ダルクともマリア的存在とも言われる雨宮処凛との1月9日の毎日新聞での対談。

 「プレカリアート」とはイタリア語の「プレカリオ(不安定な)」と「プロレタリアート(労働者階級)」を足した造語で、"生活や職が不安定な状況に置かれている非正規雇用や失業者"という意味。

 この対談で二人は現在のプレカリアートの置かれている状況が『蟹工船』の世界に通じていると述べた。続いて2月14日の朝日新聞が、小説『蟹工船』の感想文やエッセイを読者から募集した。

 それらの一連の動きに注目したリラ上野の書店員が新潮社にかけあって急ぎ150冊を廻してもらって平積みしたところ、たちまち売り切れた。手応えをつかんだ新潮社は全国の書店に一気に働きかける。さらに5月2日に今度は讀賣新聞(夕刊)が大々的に『蟹工船』を特集し、ついにテレビも動き出した・・・。

 まるでバトン・リレーのような流れが出来て、今日のブームを迎えたと言えそうだ。

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 『蟹工船』は1929年、当時北海道拓殖銀行に勤めていた小林多喜二の2作目の小説。舞台はカムチャツカ沖で操業する蟹工船。船内には各地から出稼ぎに来ている農民、炭鉱労働者、学生、貧民街の少年など雑多な人々が過酷な労働条件の下で働いている。食料は乏しく、生活環境も劣悪。さらには、労働者を虫けらとしてしか見ない監督による非人間的な扱い。地獄の底に突き落とされた労働者たちが意を決して立ち上がる・・・。「俺たちには俺たちしか味方が無ぇんだ」という労働者の悲痛な叫びは現在のワーキングプアの若者たちとも重なるのだろう。

 小林多喜二は同作発表から4年後の1933年2月20日、治安維持法違反の容疑で逮捕。署員らによる拷問で翌日死亡。遺体の状態は虐殺としか言いようのない無残なものだったという。29歳4ヶ月の短い生涯だった。

 

 小林多喜二はわかりやすく平明な文体で表現することに努力した作家だと思うが、『蟹工船』をはじめ小林多喜二の作品が、いま日本の新しい国民文学の古典として再評価されて復活し、日本の民主化のための戦いがいかに困難な道をたどって来たか、ということを改めて知るためにも若い世代を中心に多くの人々に読まれるのは良い風潮だと思う。ところでこの『蟹工船』は過去1953年に山村聰監督・主演(チェコ映画祭で監督賞)、現代ぷろだくしょん製作、当時の大映配給で映画化されている。

 間髪を入れずこの時期を逃さず映画化すれば、ヒットは期待できると思うのだが、どうやら水面下では実際に映像化への動きがあるらしい。

 著作権法によって著作権は著作者の死後50年間は保護されるが、保護期間の満了により消滅する。したがって多喜二の没後、75年を経た『蟹工船』の著作権はフリーの状態。

 先陣を切って私たちの前に登場する『蟹工船』の勇気ある製作者は、果たして誰なのだろうか。